悲しい仕送り

俺は昔から体(外でなく、内臓系)が弱く、親に心配をかけてばかりいて、その上反抗期には母親につらくあたってばかりであった。父親は、怒られた記憶がない。無口だが優しい人である。祖母は、いっつも俺をほめてくれるやさしいばーちゃん。

東京は食い物が悪いからと、3ヶ月に一回くらいおかずの仕送りがクールで送られてくる。
かーちゃんからの仕送り。俺の大好きなきんぴらやら筑前煮、たくあんの煮たやつ(福井の郷土料理である。)手作りタルタルソース、トマトピューレなどなど。ありがとうかーちゃん。

とーちゃんからの仕送り。いくらかの小遣いと、牛皮ブックカバー。欧州製の良いものだそうだ。俺が読むのは、漫画なのだが。ありがとうとーちゃん。

ばーちゃんの仕送り。ばーちゃんは俺が小さいころ、休みの日に遊びにいっては、おいしいご飯をたらふく食べさせてくれた。シソのおにぎり。甘くどい煮豆、塩からい魚。絶妙な炊き具合の厚揚げ。
じーちゃんが死んでからは、ばーちゃんは全然料理をしなくなった。生きてたころは毎日喧嘩してたのに、いざ死んだら、毎日が暇そうである。料理はご飯を炊く、味噌汁。それだけで、おかずは母が作って持っていくものを食べていた。
前にばーちゃんの家にいったときは、NHKの教育番組見てた。にぎやかで楽しいじゃない?とばーちゃんが笑いながら言ってたけど、俺はなきそうになった。
ああ、じーちゃんが死んでからはもう生きる元気なんてないんだな。そう思っていたのである。

ばーちゃんから、煮豆が送られてきた。何年ぶりかに作ったであろう、ばーちゃん手作りのおかず。南京豆は砂糖が足りていない、全然甘くなかった。分量なんて覚えていないのかも。それでも、懐かしさがこみ上げる。およそ15年ぶりのばーちゃんの煮豆であった。
母親は、ばーちゃんに、偉かったねえ・・・!なんて泣いちゃったらしいw

俺も、涙が止まらなかった。
そんな週末。俺は今、日本一贅沢な食事をしている。